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執筆者の写真笑下村塾

私たちはなぜ落選したのか 衆院選立候補した若手の本音聞いてみた


若手議員はなぜ少ないのか? 若者から見た政治の世界は? 2021年衆院選に立候補した20代、30代の方たち3人に笑下村塾のたかまつなながYouTubeでインタビューしました。自分が落選した理由。本当にたいへんだった「お金」の話。選挙の本音を聞きました。



元記事はこちら


なんでその政党選んだ?

【話を聞いた3人の政治家】

土田慎(つちだ・しん) 1990年生まれ。31歳。神奈川県茅ケ崎市出身。京都大学経済学部卒業後、リクルートライフスタイル(現リクルート)に入社。衆議院議員秘書などを経て、東京13区から自由民主党の公認を受けて出馬し、初当選。

今井瑠々(いまい・るる) 1996年生まれ。25歳。岐阜県多治見市出身。中央大学法学部政治学科卒業後、アル―株式会社にて企業向け研修・人材育成に携わる。岐阜5区から立憲民主党の公認を受けて出馬し、落選。

岸野智康(きしの・ともやす) 1994年生まれ。27歳。千葉県松戸市出身。慶応義塾大学商学部を卒業後、一部上場の不動産会社に就職し不動産と金融ファンド業務に従事。茨城3区から日本維新の会の公認を受けて出馬し、落選。

――それぞれ出馬された政党が異なりますが、なぜその政党を選ばれたのでしょうか? 土田:秘書として政治の世界に飛び込んだときには、今ほど深くは政党について考えていなかったと思います。ただ政党を選ぶ基準は外交安全保障の方針にあると思っていたので、その点で自分の信念と方向性の合う自民党を選びました。 今井:岐阜県多治見市出身なのですが、岐阜5区には何期も当選を重ねていらっしゃる自民党の古屋圭司先生がいらっしゃいます。まずは古屋先生の対立候補として25歳の私を推してもらえる政党を探す中で、立憲民主党の皆さまとお話をさせていただいて、私が大事にしている「多様性を取り入れる」というところも合致したので、立憲民主党を選んで出馬しました。 岸野:今の政治に対して課題感を抱いていたのがスタート地点になっています。課題を解決するために、与党の中から変えていくのか、野党として変えていくか。自民党や立憲民主党の政策塾にも足を運んで、政治を変えることができる組織、カルチャーを持つのはどこなのかを見極めていった結果、維新だったら現実的に変革が可能だと考えて、日本維新の会から立候補することにしました。


街宣車の中から感じた変化

――大きい党だと出馬の順番待ちをしなければいけないイメージがありますが、自民党から31歳で出馬された土田さんはいかがでしたか? 土田:自民党のように大きな党で、世襲ではなくて若くして出馬できるのは、なかなかないチャンスだったと思います。今回、偶然、東京13区の公募があり、受かるかはわからない時点で足立区に引っ越しました。チャンスを自ら取りに行く、そういう勝負に出るというのも大事なんじゃないかと思います。 ――実際に選挙に出てみて、どう思ったのか率直にお聞かせください。 土田:私は今回地縁の無い土地から立候補する、いわゆる落下傘候補として足立区に来たんですけれども、都議会議員、区議会議員の先生方に支えていただいて、その結果、11万5669票という票をいただきました。 「同じ政党なんだから応援するのは当たり前」と思われるかもしれませんが……言いにくいんですが、実際はそうともかぎらないんです。なので、いただいた応援は本当にうれしいことでした。それに、街宣車に乗っていると、1日目よりも選挙運動の最終日のほうが、声をかけてくれる人が目に見えて増える。〝熱〟ってこういうふうに伝導していくんだと実感できた体験でした。 今井:私は落選をしてしまったので、結果が出せなくて申し訳ないのですが、それでも出馬したことに二つの意義があったと思っています。一つは、岐阜5区の中で「何かが変わるかもしれない、若い世代に未来を託してみたい」という思いが高まったこと。そういう思いの一票一票が積み重なった6万8千票だったと思います。 もう一つの意義は、メディアに注目してもらったおかげで、若くても挑戦ができることを全国に発信をすることができたこと。投票したい人がいないとか、政治にそもそも不信感や諦めを感じている若い世代を少しでも減らして、「投票に行きたいな」と思ってもらえる政治活動を今後も続けていきたいと思っています。 岸野:私の場合は、衆議院議員選挙の前に都議会議員選挙にも挑戦していたので、また違った大変さがありました。今回の衆院選は、始まる前に自民党の総裁選があったこともあって、選挙に向けて世の中がふつふつと選挙や政治に関心をもっていって、どんどん熱が高くなっていくさまを非常に感じました。 その中で、日本維新の会として私がどれだけ存在感を出せていたのか。北関東、茨城では、非常に厳しい戦いだという思いを持って活動していたのが正直なところです。



お金のハードル「かなり高い」

――実際に選挙に出てみて、どういうところに困りましたか。 土田:やっぱり選挙ってお金がかかるんです。私のように地盤・看板・カバンのない者が出るには、なかなか高いハードルがありました。 今回、私が幸運だったのは、東京13区での出馬が決まったのが、選挙が終わる1カ月前だったんです。ですがいつ選挙があるか分からない中で、半年、1年前から活動するには、日々の活動費、事務所の家賃や人件費があまりにもかかりすぎます。 ――活動費は党がサポートしてくれないのですか。 土田:自民党はしっかりサポートしてくれるんですけれども、1年、2年くらいの長期のスパンで「次の選挙に向けて活動します」となると、自分で捻出しなければならない分も多くなる。特に若い人にとってはハードルになるかもしれません。 今井:党が違っても悩みは近いなと思いながら聞いていました。金銭面のハードルはかなり高いなと思います。持続的に活動するには、もちろん後援会を作らなければならない。 あと、苦労したのは、選挙を戦う中での仲間づくりです。岐阜5区は立憲民主党所属の地方議員がいらっしゃらないそうです。地道に一人ずつ声をかけていくのですが、岐阜5区は選挙区が広い。それが特に厳しい戦いを強いられた要因にもなったかなと思います。 岸野:私は土田さんと同様に、いわゆる落下傘候補でしたから、まず私自身がなぜこの地域から出馬するのか、思いをしっかり伝えないと票にはつながっていきません。日本維新の会という党名すらまだ浸透していないような地域では、それを伝えるところから始めないといけませんでした。 あと、たとえ落選していても、4年、8年と活動している方に比べて、若い候補者は活動期間が短いのも難しい点だと思います。ここにいる候補者3人とも半年程度しか活動できていない。組織の力、票の力、応援してくれる団体さんの力なくして、たった半年の活動で本当に票を取れるか。やっぱり実際のところ難しい局面はあると、選挙に出て思いました。 ――若い人が選挙に出るために供託金の額を下げては、という議論がありますが、今のお話をうかがうと、供託金を下げるだけでは若者候補者は増えないですね。 土田:もう一つ思うのは、国政選挙ってなると、そもそも20代とか30前半の人が出られる土壌がないんですよ。志があっても「そんなお兄ちゃんが出て、何かできんの?」みたいな声は実際ある。 でも、これからの20年、30年、40年、50年先を考えていくのであれば、その時代に自分が生きていて責任を取れる可能性が高い世代、20代・30代が、どんどん出ていかないといけない。そういう雰囲気を作っていくことが大事だなと思っています。


運も見越して、この道に進みたいか

――もし「政治家になりたい」と若い人から相談があったら、みなさんはどうされますか。 土田:志がある人はたくさんいる。実際、政治家になれるかどうかは、努力は当然必要ですけれども、努力では何ともならない運の部分も実はあって。そういうことを見越して、この道に進んでも後悔がないのか、若い人だからこそしっかり話を聞いてあげたい。 今井:政治に関わっている職業って政治家以外にもたくさんいます。いざ出馬をしますと手を挙げる前に、さまざまな形で政治や選挙にまず関わり、見られる景色をできるだけ見ておくと、自分にどんなチャンスがあるのか見つけやすいのではないでしょうか。 岸野:まず周りに「自分はいつか政治家になりたいんです」と言ってみたり、政治にかかわる活動をしてみたりすること。もちろん実際に出馬するにあたっては、党の公認やお金の工面、選挙区を決めるといったさまざまな作業を同時並行でやっていかなければいけないんですけど、ここには若くして政治を志した3人がいるので、何か困ったら連絡いただけたら。


政治に関わりたい人「事務所に連絡を」

――最後に、今後の展望をお聞かせください。 土田:将来に目を向けたときに、私が60歳になる2050年には、本当に今のような日本があるのか、と問うたら、私はないと考えています。だから若い人たちと声を上げて、危機感を持って、一緒に行動していきたい。 先ほど岸野さんもおっしゃっていましたが、若くして自分も政治に関わりたい、何か取り組んでいきたいという思いのある方は、ぜひ私に意見をぶつけてください。事務所にご連絡いただければ、時間を作りますので。 今井:私は選挙期間中から「小さな一歩が未来を変える」と言い続けてきました。今回、選挙を手伝ってくれた仲間たちと「小さな一歩隊(略称・一歩隊)」という形で今も活動を続けています。 若い政治家としてやるべきことは、やはり夢を語ることだと思います。どう改善していくことが、私たちの未来にとって望ましいのかということを語っていく。そして、政治に関わることをタブー視せずに、ちょっとかっこいいなと憧れるような存在になれたらうれしいです。 岸野:私自身が若くして立候補したんですけれども、若いとか若くないとか、男だから女だからとか、そういう話ではなく、やはり国民全体が政治に関心をどんどん持っていくような日本を作っていかないといけない。 選挙に出る方法以外にも、皆さんには選挙で1票を投じる権利がある。細かい政策についても議論していけるような場があればと思いますので、日本維新の会では全国でさまざまなタウンミーティングを始めています。ぜひそうした場にも参加いただければと思っております。


熱量を受け止めるのは誰?――選挙コンサルタントの視点

3人の話を踏まえ、選挙コンサルタントの大濱﨑さんに「選挙とお金」「選挙と時間」について聞いてみました。


選挙コンサルタントの大濱﨑卓真さん

大濱﨑卓真(おおはまざき・たくま) 選挙コンサルタント。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わる。

【選挙コンサルタントの大濱﨑さんの話】 あくまで一般論ですが、まずは立候補するにあたって供託金という制度があります。法律で決められた金額を、一時的に法務局に預けるお金です。 衆議院小選挙区なら300万円、比例重複するのに300万円。その他、例えばチラシなどの印刷物、選挙事務所を借りる家賃、看板、選挙カーの費用、選挙カーに乗るスタッフの人件費などにお金がかかります。 もちろん党の支援や寄付がある。でも20代で数百万とか1千万を超えてくるお金をハンドリングしなければいけないのが、どれだけ大変なことか。 多分、お三方一致してうなずかれるのは、「選挙戦後半はお金はいいから時間が欲しいと思っていた」んじゃないかと。言い換えれば、時間があればもっと多くの人に自分の思いを伝えられるはず。それくらい、自分たちの選挙活動が熱量として、相手に伝わっているという感覚があったと思います。 その熱量が伝わった先は、我々有権者のはずです。熱量を受け止めた者ができる行為は、やはり投票です。 そして、こういう若い人たちが今、政治活動を一生懸命している。その気持ちや熱量がまた伝播(でんぱ)していき、政治そのものを開いていくのではないかと思います。

(取材/たかまつなな 編集協力/塚田智恵美)


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