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執筆者の写真笑下村塾

玉木さんに「支持率1%」どうするつもりか聞いてみた

新しく生まれ変わった国民民主党ですが、苦戦が続いています。立憲民主党との合流に参加しなかった旧党の国会議員が昨年9月、名前を維持した上で、新しい「国民民主党」を設立しました。従来との違いが分かりづらいのか、他党との差別化が国民に伝わっていないのか、最新の世論調査での支持率は1%を切っています。党のホームページには大きな文字で「政策がある国民民主党」を掲げていますが、今一つ特徴が見えてきません。YouTube「たかまつななチャンネル」で、玉木雄一郎代表と対談して尽きない疑問に答えてもらいました。



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「立憲はサンダース、国民は小さいけど若いバイデン」

――立憲民主党とそもそも合流しなかったのは良いことだと思っていらっしゃるんですか? 玉木:違う考えを持っていて一つになれないんだったら、別々の党として歩む。それが筋だと思います。国会への向き合い方、基本的な政策、政治に向き合う気持ちや態度とか、昨年からいろんなことを議論していく中で立憲とは折り合えなかった。 我々はコロナ禍で困っていることに対して解決策をきちんと示す政治をやりたい。旧国民民主党の時から「政策提案型」を掲げ、右や左に偏らない改革中道でやってきました。今もそれを貫く覚悟を持った人たちが集まっているのが新国民民主党と私は思っています。 ――ただ、合流騒動の時、結局、立憲のほうが数が多い訳じゃないですか。ということは、理念は素晴らしいけど、実現可能性が実感できなかったから国民民主党の国会議員が今、少ないという気もするんですけど、そこはどう分析されているんですか? 玉木:本当に野党が政権を取ろうと思ったときには、今の国民民主党ぐらいのポジションの政策じゃないと取れないと思います。2009年政権交代の時も、ある程度保守系の人たちも安心してコミットできるような幅の政策が必要で、あまり左に寄りすぎてもだめだなと思いました。 例えるなら、立憲はサンダース、国民はバイデン。ある種左派系と中道路線の違いはあります。おっしゃる通り少ないとできないことも多いのですが、政党は政策を同じくして集まっているから、政策を曲げることはしなかったという判断です。 立憲との役割分担で言うと、多分二つあって、一つは特に外交安全保障に対しては我々は相当厳しい見方をしているので。尖閣の問題にしてもウイグルの問題にしても、ここはかなり与党というよりも、与党以上に時には厳しくやっているというところが一つと、もう一つは国内政策において、積極財政を言うところがないんですよ。れいわさんぐらいかな。 将来の増税が目前に迫っている中もらったって、取られるんだったら使わずに置いておこうとなって、それで消費に回らないんですよ。だから、使うときには思いっきり迷いなく使うっていうね。そういうことをしないと、結果景気が良くならないし税収も増えない。




「審議拒否はしない。何かをすることに力とエネルギーを注ぎたい」

――もし立憲民主党と一緒になったらできなかったんですか? 玉木:立憲もやっていたと思うが、行政のチェック機能を果たす上で批判が強い印象だった。それ自体は野党の大事な役割だから、立憲さんに任せる。 我々は何かをすることにもっと力とエネルギーを注ぎたい。「けしからん」だけではその先に行く手段がない。だから、私たちは「つくろう、新しい答え。」というキャッチフレーズを掲げている。新しい答えを作っていかないと、新しい日本は作れないなと感じているんです。 ――私は若い有権者のために各政党のマニフェストをまとめた比較表を作るんですが、立憲と国民の違いを作るのはすごく難しいです。結党大会の取材に行った時にその話をしたら、「政策は似ているかもしれないけど、国会対応が違うんだ」とおっしゃっていました。国会対応の具体的に何がどう違うんですか? 玉木:基本的に審議拒否的なことを我々はしません。国会に出される法案のほとんどが、政府提出のものです。与党自民党や公明党の事前チェックを受けた上で国会に提出されるから、与党議員は全員賛成するのが決まっているんです。一方で野党はいかにこの法案の審議を遅らせて、廃案に持ち込むことを狙います。なぜ廃案にしたいかというと、国会で成立しなかった法律は原則だめになるんです。時間切れにして廃案にするという「日程闘争」に物凄く命を懸けるんです。 ――議論しながら、少しずつ変えるのは難しいんですか? 玉木:この点は、与野党における国会のあり方を変えなきゃいけないと思っています。やっぱり完璧だと思って出した法案でも、議論しているうちに改善が必要と思える点が出てくることがあります。野党はなんでも反対という批判もあるけど、与党はなんでも賛成なんです。中身じゃなくてイエスかノーか、廃案にできるかどうかで争っている。それは不毛だと思ったんです。 国民民主党は野党全体に変化を作り、国会の中でちゃんと議論して良いアイデアが出たら変えていきたい。そのためには与党にも広い度量が必要です。修正が当たり前になっていくような法案審議に変えていかなきゃいけない。野党も気に入らなかったら欠席して審議拒否をするのはやめなきゃいけない。かっこいい言葉で言うと、我々は「国会改革」をしていく。



「国民のために必要なこと実現させる」

――今後、国民民主党が目指す姿についてお伺いしたいです。野党第一党になるぐらい党員を増やすのか、少人数で政策通の人を獲得していくのか、一部では「自民党の補完勢力になりたいのか」みたいな言われ方もしていますが、どうされたいんですか? 玉木:自民党の補完勢力とよく言われるのが分からない。私はもともと自民党に代わるもう一つの選択肢を作りたいという思いで政治に入ってきた。それは変わらないです。 例えばトランプ政権の時は中国にすごく厳しかったですが、バイデンになって宥和政策になっていますか?もっと厳しいですよ。対外的な政策は、どの政権になろうと外的な要因が非常に多く絡む。与党がこう言っているから逆に我々は中国に甘くなりましょうとなったら、政権は担えないと思います。 私たちは国民のために必要だと思ったことをやる。結果として自民党に似ていることもあるし、全く違うこともある。自分たちが政権を担おうとした時にベストな選択は何なのかいうことを考えて、政策を出していきたい。 「『政策提案型』の我々は、より良い方向に政府を先導する」 ――国民民主党のキャッチフレーズ『つくろう、新しい答え。』は、国際社会の変化に対して、新しい答えを作っていかない日本は取り残されてしまう、という考えだと説明されています。 玉木:19世紀の終わりごろから存在感を放ってきたアメリカが2度の大戦を経て力を付けてきたけど、中国がそこに台頭してきた。もう一つは、AIやIT技術を駆使したデジタル改革。私はデジタル改革と中国の台頭が、実は数百年に一回の変化を生み出していると思っている。新しい日本はそこに対応しなくちゃいけない。子どもたちの世代が本当に大変なことになる危機感があるから、新しいことをどんどんやっていかないと生き残れない。 ただ、政界で力を発揮するためには数が必要です。次の衆議院選挙で現職は全員勝って少しでも人数を増やしつつ、当面の戦略は協力できることは他党と連携する。連立政権を組むのも選択肢にしていくけど、今はまず現職全員当選。若い候補者はもちろんのこと、ジェンダーバランスも考えて女性をできるだけ擁立していきたい。 自分も経験があるから分かるけど、与党は目の前のことに一生懸命にならざるを得ないんですよ。今なら明日のワクチン、来月のワクチンどうしようが重点課題です。だからこそ、野党である我々は、より良い方向に政府を先導していきたい。今年1月の代表質問で菅総理に伝えた提案のうち、既に6割ぐらいは実現しています。


――例えばどういうものがありますか? 玉木:孤独担当大臣の新設です。これは2019年からずっと言い続けてきました(https://www.dpfp.or.jp/article/201595)。コロナでその問題が顕在化して、望まない孤独をきちんと政策としてやらなきゃいけなくなりました。実はあんまり目立たないんだけど、菅総理が就任時の目玉政策の一つを覚えていますか? ――不妊治療の保険適用ですか? 玉木:その不妊治療の保険適用も昨年11月に私が予算委員会で提案しています。これは実際、21年度から実現することになったんです。政府が何かを政策を打ち出す時、そこからどうしてもこぼれる所が出る。足りないところは補った内容の提案をして実現させるのが、我々国民民主党がこれまでやってきたことです。 ――玉木さんの中で衆議院選挙に向けた候補者選びの基準は設けていらっしゃるんですか? 玉木:とにかく「日本を変えたい」、その思いを持っている方です。お金を稼ぐとか、出世したいとか。そう言うんだったら、自民党や立憲のような大きい政党に行ってもらったらいい。うちでやるのは相当きついです。その反面、1期生でも自由にいろんなことが言え、どんどん活躍の機会がある。国民民主党の新しいカラーを作ってもらいたいなと思っているぐらいです。


「明確なビジョンがある人にどんどん来てもらいたい」

――誰でも政治家になれるチャンスを広げることは、政党としてすごく大事なことだと思います。その一方で政治家の資質も大事だと思います。どういう人に来てもらいたいですか? 玉木:何をしたいかというビジョンがある程度明確な人や各分野でプロフェッショナルな活躍をしていたような人には、私はどんどん来てもらいたい。NPOをはじめ、社会的な課題に何かぶち当たり改善に取り組んできた人とかが当てはまります。 ――ちなみに今、国民民主党の支持率は1%切ってます。支持率が上がらないことをどう分析されているんですか? 玉木:いくつか世論調査を分析していると、国民民主党の30代以下の支持はまあまあなんです。逆に40代〜60代というボリュームゾーンがほぼゼロ。立憲と区別が付いていないとか、同じなら立憲のほうがいいかなと考える人もいるかもしれない。地域での活動量が少ないのが要因にあると思います。 やっぱり、「どぶ板」は大事です。良い政策を考えるのと同時に、地上戦で具体的な活動をするとか、たくさんの声を聞いていくとか。地道なことを積み重ねることも大事だと思います。コロナの時にはなかなかやりにくいけど、今後は国会議員や自治体議員がチラシを配って回るということもしていきたい。

「20~40代の世代に光を当てた政策。中間層も同時に支援する」

――支持層をこうやって広げるというビジョンはありますか?今のお話を伺っていると、結構他の政党のやっていらっしゃることと似たようなことだと感じました。組織が強い自民党や共産党と同じやり方だと、支持率が変わらないような気がします。 玉木:日本の課題を考えたときに、若い人にしわ寄せが行っているのは確かです。頑張って働いている20〜40代に、我々はもっと光を当てたい。私は「若者免税」を推奨して、30代以下については所得税・住民税をタダにしたい。これは日本全体のためなんです。今の制度は若い人に支えられて、高齢者も成り立っている。若い人が諦めちゃったら、高齢者も共倒れする。働く現役世代のために振り切ろうと思うんだけど、兼ねてそれを言う政党がなかった。 ――ここまで気持ちよく言ってくださる方、いらっしゃらないです。 玉木:次の衆議院選挙に向けていろいろな政策を提案していますけど、若者に特化した集団として政策を整理しなおそうと思っています。日本は中間層を凄く無視する国です。所得の低い人のために高所得な人から取って、持っていない人に配る。この過程で中間層は全く蚊帳の外。頑張って税金払っている中間層の人を無視すると何が起こるか。低所得の人を恨むようになります。 ――生活保護に対する過剰なバッシングも一つですね。 玉木:中所得者と低所得者でケンカしているのは、悲惨だよ。社会の分断も生まれる。私は低所得者を支援するのは絶対に必要だと思うけど、同時に中間層も支援していくというのが自分の考え。あらゆる政策体系をそういう形で組み立てればいいと思っている。 「消費税の減税や10万円給付は政権取ったら絶対やる」 ――今回の衆議院選挙で、ずばり政権交代を目指されますか? 玉木:どんな形でも政権には常に狙いたいと思っています。政権を取ったら何をするかという発想でしか発言していません。消費税の減税や10万円配ることをなぜ盛んに叫ぶのかというと、実際やりたいからです。それをやるためには政権を取るしかないんだよね。 ――現状では他党と連携して政権を取り、国民民主党が閣僚ポストをいくつかもらえるというところが現実的だと思いますが、玉木さんはもっと大きなところを描いてらっしゃる気がしますが、そんな状況でも本当にやりたいことはできるのでしょうか? 玉木:次の選挙までまだ最大半年あるけど、一回の選挙でどこまで行けるか。根っこには常に何をしたいかということを持っておかないと、それこそブレちゃう。今の日本の経済と社会にとって必要な政策を実現するんだったら、あらゆる選択肢を排除しない。

「民主党政権時代、残念だったことは経済政策」

――ところで民主党政権のことはどう総括されているんですか? 玉木:あの時は1年生議員だった。与党議員として初当選、その後野党に転落して10年になる。せっかく政権取れたのに、もったいないと思いました。一番残念で反省すべき点は、経済政策を間違ったってことです。リーマンショックの後だからデフレ傾向だし、金融も財政はふかしまくるべきだった。それをせずに消費税増税に走った。あのときの客観的な経済情勢からすると間違ってる。金融ももっと緩和すべきだったし、財政ももっと出して、そのほうが経済の戻りは早かったと思います。 ――経済政策で間違えがなければ、議員さん同士での内紛みたいなものも起こらなかったと思いますか? 玉木:起こらなかったと思う。あの時は消費税をマニフェストで掲げていなかったからね。 ――経済政策の考え方の違いで分裂に至ったというのもありますもんね。 玉木:もちろん消費税増税するか否か、財政再建を優先するかどうかで政策的に分かれた。政策の切れ目が政局的な切れ目になって、党が分裂したのは非常に残念だった。 枝野さんとの党首会談で合意したかったのは、消費税の減税についてでした。国民生活を救うために、当時野党はまとまろうとしていた。維新も含めて野党が唯一一致できる点が、消費税減税だった。あとは立憲が賛同すれば、自公と大きな差が出る点になった。結局最後まで党首会談はできずに終わり、こういう形になっている。 ――私も立憲民主党の結党大会に取材に行き、いろんな記者の方が質問していましたけど、枝野さんは消費税のことについて答えてなかったですもんね。 玉木:答えないんですよ。財政再建のことを言うような状況じゃ全然ないんです。まずは今の経済を立て直していくってところに最大振り切らないと、結果税収もなかなか戻ってこない。経済の認識と危機感を持って、もっと国が役目を果たさなきゃいけない。昨年の10万円の一律給付も、党としても早くから訴えてきました。今も2回目配れと言い続けています。  ――一律給付はバラマキ批判もあります。 玉木:貯蓄に回ると言うけど、当たり前じゃん。配ったから貯蓄に回ったからといって、それを批判する必要はない。政府がへんてこなところに使うんだったら、まだ国民の貯金に回っているほうがよっぽどワイズスペンディング(賢い支出)だと思います。

事業仕分け第3弾で発言する玉木雄一郎氏(奥右から2人目)と枝野幸男氏(同3人目)=2010年10月28日出典: 朝日新聞

政治人生を懸けて「義務教育を引き下げたい」

――玉木さんのご著書を拝読し、いろんなことにご関心があるのは分かったのですが、全体として玉木さんが何をやりたい方なのかがあまり分からなかったんです。安倍さんなら憲法改正・拉致問題・北方領土問題のような、政治家人生をかけてやりたいことが良くも悪くも分かるのですが…。玉木さんにとって政治家人生を懸けてやりたいことを1つに絞るなら何ですか? 玉木:私が一番やりたいのは、人を大切にする国にしたいんです。天然資源がない日本の唯一ある資源は、人材しかないんですよ。これ今も昔も変わらない。明治維新がうまくいったのも、そこに人を育てていたからです。 あともう一つは、義務教育のスタートを3歳からにする。待機児童問題が根強くある中で、「待機小学生」はいない。義務教育にして必要な先生を全部国がお金をかけてくれるから、待機している小学1年生はいないんです。3歳に義務教育を引き下げたら、待機児童はかなり改善できると思う。教育の無償化という狭い範囲じゃない。生涯にわたって自分をアップデートしようとする時に、それを無償でできる社会を実現したい。 ――人を大切にするということですね。 玉木:安倍政権時代に「日本を世界一企業が活動しやすい国」を目指すと言っていました。逆に言えば、私は世界一働きやすい国にしたい。休日が取りやすく、ワークライフバランスもしっかりしている。企業が一番活動しやすい国になっても、そこで働いている人が幸せじゃなったら意味がない。 社会にコミットしていることが一番やりやすく、さらに幸せを実感しながら自己実現していけるような国にしていきたい。会社も社員を大切にしなきゃいけないし、社会全体が一人一人を大切にしていくようになってほしい。



「陳情はやり方とタイミングを意識すれば効果的!SNSも活用を」

――若い人に政治に興味を持ちましょうとか、選挙に行きましょうと常々言っていますが、やっぱり政治家との距離感がすごいある。玉木さんが考える議員の取説について、アドバイスがあったら教えてください。 玉木:タイミングとやり方があります。通常国会は1月から始まり、秋の臨時国会は大体9月〜11月に開かれます。これらの国会中か、開会前をまず狙いましょう。年始直後や夏休みが終わった後ぐらいに議員へ陳情に行くのは結構タイミングがいいです。 もう一つはネット時代なので、陳情に行く際にはTwitterに投稿しましょう。政治家に効くのは他に選挙区の友人がいるとか、おばあちゃんが住んでいると伝えることです。耳を傾ける度合いが2、3倍違います。 ――現役の学生が玉木さんに陳情に来たら会っていただけますか? 玉木:小学生、中学生、高校生からもTwitterのDMやインスタのメッセージで既にバンバン連絡が来るよ。この部屋には多分、国会議員の中で最も中高生が来ていると思うよ。 ――YouTubeやっていますもんね。 玉木:良い意見をくれるよ。Zoomやインスタライブで聞いた声には、我々が本当に必要だと思っていることは実現していきたい。 今後は「AI陳情」も作っていきたい。大体、既存の陳情はパターン化できて、2000種類ぐらいに分類できると思う。陳情者が一定のフォーマットで書いてもらったらデータベースを下に担当省庁の窓口を瞬時に検索して、手続きをスピーディーにさせたい。 過去の分類の中に当てはまらない陳情ついては政治家が直接やる形にして、政治に対するアクセスをもっと気軽にしていきたい。 ――今度はぜひYouTubeで、若者陳情会を生配信しましょう 玉木:何かテーマを見つけて、それやろうか。まず若者の政治参加で大事なのは、成功体験だと思う。うちのパーティー券買ってくれって言いません。国民の権利としてこれおかしいと思ったことは、声を上げたらいいと思うしね。

▶︎対談動画はこちらから



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