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執筆者の写真笑下村塾

共産主義って怖くないんですか? 志位さんに若者政策を聞いてみた

衆院選挙を控え、野党共闘のあり方が注目される中、野党は若者政策についてどのように考えているのでしょうか。共産党は、格差の解消だけでなく気候変動対策やジェンダー平等にも積極的な一方、「共産主義」を警戒する人が少なくありません。共産党が掲げる「共産主義」とはいったい何のか? 本当に怖くないのか? 志位和夫(しい・かずお)委員長にYouTubeたかまつななチャンネルで聞きました。



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共産党の理念とは

――まず日本共産党は、どういうことを理念にした党ですか? 社会主義、共産主義が理念です。今、世界的にも貧富の格差がひどいじゃないですか。気候変動も大変な危機になっていますよね。お金儲け第一、利潤第一では立ち行かなくなっている。この社会を乗り越えて人類はもっと先に進むことができる。社会主義、共産主義といっても、潰れてしまったソ連や今の中国みたいな自由もなければ民主主義もない、人権もないという社会ではなくて、資本主義の下で、みんなの力で勝ち取った自由や民主主義、人間の個性をみんな引き継いで豊かに花を開かせる社会を目指します。 ――「共産主義」という言葉をちょっと怖いと思う人は少なくありません。 共産主義社会の特徴は、全ての人間が自由で全面的に発展できることです。みんなが自分の能力を活かせる。そのために一番大事なことは、労働時間をうんと短くする。自由な時間でみんなが自己実現ができるということです。マルクスもエンゲルスも若いころからそういう社会をどうしたら作れるかをずっと探求していた。「共産党宣言」にある有名な言葉として、「共産主義とは、各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件になる」。キーワードは「自由」なんですよ。自由に発展する社会ですから、僕は好きになりました。 ――日本共産党が国会で最も多く議席を占めたら、社会はどう変わるんですか? いっぺんに社会主義・共産主義を作ろうと考えているわけじゃないんですね。今の日本には大きな歪みが二つあります。ひとつはあまりにひどい「アメリカ言いなり」。例えば沖縄の米軍基地新規建設の問題。アメリカ言いなりを正して、本当の独立国と言える日本を作る。 もうひとつは、財界の身勝手という問題。例えば長時間労働、過密労働、非正規雇用。本当に働く人を使い捨てにする。こういうまともなルールがない社会をきちんと正していく。 この二つの歪みを正して民主主義の徹底した日本を作る、民主主義革命と私たちは呼んでいますが、それが当面の目標です。 ――社会主義や共産主義では、貧富の差はなくなっていくと思いますが、大企業からお金を取ると起業するマインドとか競争力が失われるんじゃないかと思います。そこはどうお考えですか? 大企業を潰したりすることは考えていません。大企業は大きな社会的な力を持っていますから、それにふさわしい社会的な責任を果たしてもらうという考えなんですね。税金はもちろん応分の負担をしてもらうけれども、競争力がなくなるというのは神話だと思います。



自衛隊をなくしたら国防はどうなる?

――共産党の公約や党の要綱を読むと、国防がすごく特徴的です。自衛隊をなくして防衛費を削っていくと訴えていますよね。 私たちは自衛隊を今すぐなくすとは考えていないんです。自衛隊と憲法9条はどうしても矛盾してきますから、9条という理想に向かって、自衛隊の現実を一段一段変えて、ゆくゆくは国民の合意で9条の全面実施をすることを考えています。 ――自衛隊がなくなると、中国の脅威が高まりませんか? 中国については、向こうが力づくでやってきたからといって、こちらも力づくでやろうというのは一番危ない。そうではなくて外交の力で中国の横暴を抑えていくことが重要です。いま中国に対して一番欠けているのは、国際法に基づく批判です。東シナ海や南シナ海も、国際法違反だと共産党はずっと批判し続けてきました。香港やウイグルについても、あのような人権抑圧は国連憲章だけではなく、世界人権宣言、国際人権規約、中国も賛成した国際規範にも反しているときちん批判する必要があります。

野党共闘で取り組むことは

――選挙も近いので、野党共闘についてお伺いします。安倍政権のときの不祥事については解決してほしいと思う一方で、大きな国家像って何だろうと、いまいち分からなかったんですけれども。 9月8日に野党4党と市民連合の皆さんと総選挙に向けての共通政策を確認しました。


  • まず安保法制を止めること。集団的自衛権を行使できるようにしてしまったのは、海外で戦争する国への道ですよね。これを止めようというのが第一項目に入っています。

  • 政府が拒否している核兵器禁止条約の批准を目指すこと。被爆国として当然だろうということです。

  • 辺野古新基地を中止すること。沖縄県民の皆さんが何度も総意を示しているのに相変わらずやめようとしない。これはきちんとやめようと。

  • 従来の医療費削減政策を転換し、医療・公衆衛生の準備を迅速に進めること。医療費削減をやってきて、お医者さんの数を抑えて保健所も半分にしてしまった。それが今の医療崩壊を作っている。だからこれを切り替えて、医療や公衆衛生をきちんと重視します。

  • 消費税減税を行い、富裕層の負担を強化する。今大儲けしている富裕層や大企業に税金を払ってもらって、消費税を減税する。世界ではかなりやっていますよね。それを日本でもやろうと。

  • 石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素世界を追求する。

  • ジェンダーの問題では選択的夫婦別姓制度。女性に対する性暴力の根絶に向けた法整備。ジェンダー平等に向けた指針です。

  • 最後に、権力私物化の、森友・加計学園問題、桜を見る会問題についてもきちんと言い続けていく。


こうした大転換の方向を、野党で確認しました。




共産党のジャーナリズム

――共産党がすごいと思うのは、森友とか桜に関する質問について、大手マスコミがやるようなことを、共産党がリードしてきたことです。赤旗は政党の機関紙ですけれど、ジャーナリズムとしてもすごいと思います。 桜を見る会については、共産党や赤旗が特別に情報を持っていたわけではないんですね。でも、おかしいぞという批判精神があった。今、メディアも政府側、体制側に巻き込まれてしまって批判精神がなくなっている。 赤旗は権力の監視、批判精神を持っていたことが大きいんじゃないでしょうか。取材についても現地の地方議員さん、党組織の皆さんと協力してやります。現地取材がどんどんできるというのは、政党の機関紙の強みでもあると思います。

審議拒否はしていない

――共産党の審議拒否について批判的な見方をしている人がすごく多いと感じます。なぜ今、審議拒否をするようになったんですか? 審議拒否は今でも基本的にしていません。国会のルールを与党側が壊してしまって国会が暴動状態になっているときに限って、国会の審議に出られないことはあります。野党側の要求が通らないから、駄々をこねて行かないなんてことは今もやっていません。 ――でもそれをメディアは審議拒否だと批判的に伝えていますよね。 それは審議拒否ではなくて、与党が審議に出られない状態を作ったということですよね。むしろ審議拒否をしているのは政府与党です。野党が憲法に基づいて国会の召集を要求しているのを拒否しているんだから、これ以上の審議拒否はないじゃないですか。 ――私には国会が茶番にしか見えないんです。野党が審議拒否をするとニュースになりますが、与党側も野党側が出した議員立法を審議しないことがある。国会では、自民党でもまれたものがそのまま通りがちで法案がブラッシュアップされない。そこを変えるのは難しいんですか? ルールを作る必要がありますね。与党が提出したものだけじゃなくて、野党が提出したものも、原則みんな審議の場に乗せて、国民の見ている前で議論するルールを作りたいですね。 ――それは、志位さんでもできないんですか? これは国会の多数を持っていないとなかなかできないですね。私たちが、野党が多数を取れば、今度はそういうルールを作りたいです。野党になった自民党の出したものも審議します。




改憲はほんとうに必要ないのか

――共産党は改憲に反対の立場ですが、なぜそこまでこだわるんですか? 僕らは今の憲法はとてもよくできていて、変える必要がないと思っています。今の憲法の前文から全部の条項、これを全面的に擁護すると。特に平和的な、民主的な条項がありますよね。これは完全に自負するということで、日本の政治はうんと前に進められる。憲法と日本の政治の関係で言うと、憲法はかなり進んでいるけれども、日本の政治家はずっと遅れている。 例えば憲法には、30条に及ぶ人権項目がある。あれだけ詳しく人権が規定されている憲法というのは、世界でも珍しいんですよ。ところが日本の人権は守られていない。例えば女性の権利、労働者の権利、学ぶ権利、守られていませんよね。言論の自由も危ういこともある。ですから、憲法では立派なことが書いてあるのに、政治が遅れちゃっているんですね。政治を憲法並みにするというのが今の政治の役割であって、憲法を変えることに中心があると思っていません。 ――若い人の中では、改憲への抵抗感は少なくなってきていると言われています。憲法といえば9条だけではなくて、新しい権利である環境権や同性婚なども含まれます。9条以外の面を見たら改憲してほしいという人は少なくありません。人権を大事にしている政党だからこそ、改憲論議を進めてほしいと思いますが、それは難しいですか? 今の日本の憲法は、奥行きが深いんですよ。例えば環境権は確かに書いていないけれど、幸福追求権があるんですね。この中に全部含まれている。ですからそういう根本的な条項に即してやればいいわけです。 同性婚の問題も、憲法との関係で言うと「婚姻は両性の合意にのみ基づいている」と。両性とあるから男女というふうに狭く捉えられますが、「のみ」というのが大事なんですよ。当事者の合意のみ。戦前の日本の明治憲法の下では、家長が許可しないと婚姻ができなかったんですね。でも今はそうではない。ですから今は同性婚も含めて当事者が合意すれば婚姻ができると解釈されるべきだという説が大きいですよね。 ――それは憲法ではなく、法律を変えたほうがいいということですか? そう、法律を変えればいいだけ。現憲法の下でも同性婚は認められると。民法を変えればいい。


志位委員長の引退、世代交代は?

――若い人の感覚が政治に反映されるには、政治家の世代交代も大事だと思います。志位さんは20年以上共産党のトップを続けていらっしゃいますが、世代交代についてはどうお考えですか?ご自身の引退については考えていらっしゃいますか? 世代交代はずいぶん起こっていると思いますよ。共産党の議員でいうと、小池晃さんにしても田村智子さんにしても山下芳生さんにしても倉林明子さんにしてもね。僕らより下の世代の皆さんがどんどん頑張っています。もっと下の世代でも吉良佳子さんとか山添拓さんとか頑張っているしね。ですからちゃんと次の世代が見えてきていると思います。 ――YouTubeで長期政権の問題点を批判すると、決まって志位さんや枝野幸男さんにも同じ質問をしろとの視聴者によく言われます。志位さんはいつが交替時だと思っていらっしゃいますか。 党大会で人事を決めて、次の大会でまた新たな人事でちゃんと選挙をやりますから。そこで皆さんで相談して決めるということになるとしかお答えしようがないです。ただ、いつまでも続けるのかと言われたら、いつまでもやるわけないじゃないですかそれは。いずれは変わると。当たり前です。




気候変動とジェンダーが重要な争点

――若者の声をたくさん聞いていただいているのはすごくありがたいですが、どうしたら若い人の声が政策に反映されるかをお聞きしたいです。優先順位が上がるにはどうしたらいいですか。 学費の問題や奨学金の問題はもちろん大事なのできちんとやっていきたいと思いますが、若者政策と言うと狭くなってしまう。先日の若い皆さんとのトークの場で感じたんだけれども、若い人の間では気候変動やジェンダーなど世界の大問題に強い関心がありますよね。それを取り上げていきたいです。 今度の総選挙で私たちは、4大争点を提案しています。一つは暮らしの問題で、新自由主義を終わりにして、命と暮らしを守る政治に変えようと。二つ目に気候危機を本気で打開しようと具体的な提案をしました。三つ目にジェンダー平等な日本を作る。選択的夫婦別姓も認める。四つ目は平和です。若い皆さんにとってすごく身近な問題を、党としても全力で争点にするという姿勢でやろうと思っています。 ――ありがとうございます。気候変動とジェンダーが若い人にとって切実な問題だと思うので、ぜひお願いします。最後に、今度の衆議院選挙、若者は共産党に入れるべきでしょうか? 入れてほしいですね。政権交代ができれば、さっき言ったことは全部実行できます。一個一個日本の政治はよくなりますよ。間違いなく変わる。共闘の問題でも、日本共産党がこれまで一番ぶれずに誠実にやってきましたから。

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