日本の若者は、“自分の力で社会を変えられる”と感じている割合が世界でも少ないと言われています。「18歳意識調査」(日本財団、2019年)によれば、「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」と回答した18歳の割合は26.9%。そんななかたかまつななが代表を務める「笑下村塾」では若者に政治に関心を持ってもらおうと、「お笑いを通して政治を学ぶ」ことをテーマに、出張授業を行っています。
たかまつななが考える主権者教育とは
―― たかまつさんは、なぜ出張授業を行おうと思ったのですか。
私が大学院の1年生の時に18歳選挙権が導入され、やっと若者が政治の場で主役になれると胸が踊りました。それまでは、若者の声が政治に届くことはありませんでしたから。本来はそこでしっかりと政治を学んで、若者が投票に臨むべきなのに、若い人に政治を伝える教材がないというのも実情でした。そこで起業して笑下村塾を立ち上げ、クラウドファンディングでお金を集めながら学校へ出張授業に行くことになったのです。それが主権者教育の始まりです。
―― たかまつさん自身は、どのようなきっかけで政治に興味を持つようになったのですか。
小学生4年生の時、アルピニストの野口健さんの環境学校に参加し、富士山でゴミ拾いをしたことです。それが政治や社会問題に興味を持ったきっかけです。ゴミを拾って富士山をきれいにするために、税金が使われるといいなと感じたのです。中学1年生の時読売新聞の子ども記者になって、富士山で清掃登山を行いコラムに書いたのですが、同世代の人があまり読んでくれない。新聞だけじゃなく他に伝える方法を探していたとき、お笑いに出会ったのです。
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― そもそもたかまつさんは、主権者教育をどのように捉えていますか。
社会にいかに参画していくかというのを学ぶのが、主権者教育だと思います。社会問題に対して当事者意識を持ち、行動する土台を作る。主権者教育イコール投票教育だというのは誤解で、投票はあくまでも主権者教育の一部に過ぎません。
社会を変える方法は、選挙に行く、政治家に会いに行く、メディアに投書する、署名を集める、デモに行くなど、たくさんあるなかで、選挙も社会を変えるひとつの方法だということを教えます。主権者教育の波及効果として、異なる考え方の人との合意形成の取り方が身についたり、自分の意見が言えるようになったり、対話できるようになったりする効果も生まれています。
当事者意識がないと、子どもにツケが
―― なぜ主権者教育が必要なのですか。
社会を変えられると思っている日本の若者は少なくて、26%しかいません。これは先進国の中でも、極めて低いです。社会を変えることを、楽しいと思える子どもたちを増やしたい。そうでないと日本は、古い体質や年功序列の文化が残ったまま変わらずに、イノベーションが起きることもないと思います。私は今29歳ですが、100歳まで生きる時代になっても70年後の日本の姿は見えません。政治家も数年先の目先の話しだけではなく、持続可能な社会を作るために数十年先の話もしっかりしてほしいと思います。
―― 若い人が政治に関心を持たないとどうなりますか。
子どもたちにツケを回してしまいます。気候変動や少子高齢化、財政赤字など、今の日本には課題が山ほどあります。サービスの政治に陥るとたとえば財政が逼迫しても、国債をバンバン発行すればいいということになってしまう。そうならないためには、根本から社会を変えていくような人材を増やしていくことが大事です。主権者教育をすることで、いかに他人と合意形成を取っていくか、社会問題解決のためにどうすればいいか、行動できる人材を作って行きたいと思います。
―― 具体的には、どのような活動を行っているのですか。
高校を中心に、全国の学校にお笑い芸人の仲間と出かけて授業を行っています。内容は、「超高速パワポ芸!3分で分かる民主主義」「芸人と政治家のネタの選び方は実は同じ?」「若者の予算クイズ」「逆転投票シミュレーションゲーム」など、政治の敷居を「笑い」で下げ、選挙に行かないと損をすることを楽しく伝えます。
こちらが一方的に伝えるだけでなく、生徒たちによる「社会を変える宣言」も実施します。「ブラック校則を変えるために署名を集めたい」、「電車やバスの本数を見直すため政治家に会いに行きたい」、「学校指定の靴下や制服が高すぎて買えない」など、子どもたちの切実な課題を聞いています。
群馬県からは、選挙管理委員会から依頼をいただき、県内全79校の高校のうち60校、1万人以上の生徒を対象に実施しました。
―― 実施してみて、反応はいかがでしたか。
群馬県の例では、7月の参院選で県内の18歳投票率が前回に比べ8%以上上昇しました。生徒さんからも「社会を変えられるかもしれないと思ったので、行動に起こしたい」、「友達を誘って選挙に行こうと思います」などという声をもらっています。それはすごく嬉しかったですね。
またこの取り組みは①お笑いを使った主権者教育の新しさがあること、②県とタッグを組み県の全ての高校での実施を目指した面的な取り組みであること、③県の18歳投票率が8%以上向上する成果も出ていることを評価いただき、「第17回マニフェスト大賞優秀賞」を受賞しました。
――― 最後に、今後の抱負を聞かせてください。
笑下村塾は「社会問題に対して自分事だという当時者意識を持って行動する人を増やす」ことを目標に掲げています。そのためには、子どもたちの社会を変えたいという気持ちに火を付け、変えるための具体的な方法を伝えるために出張授業を引き続いて実施します。私1人だと限界があるので、芸人さん100人に協力を依頼。この先10年間、毎年50万人以上の生徒たちに出張授業を届けるというのが目標です。
もう1つは若者議会を作って、高校生が社会を実際に変えていく場にしたい。今、若者が社会を変えるための場所はありません。それを作り、若者の声を政策に反映させるような場作りをしていきたいと思っています。
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