「く〜ま〜だ〜まさしぃ〜の〜」から始まる小道具を巧みに使いこなした明るい芸風で、イベントに引っ張りだこのくまだまさしさん。 そんなくまださんが昨冬、衝撃の内容をツイート。過去に壮絶ないじめ体験があったというのです。このツイートは反響を呼び、たくさんの人を勇気づけました。今の姿からは想像できない過去を持ちながら、どうやってそれを乗り切ったのでしょうか?vol.1では、今いじめで悩む人たちに向けて、当時の話やいじめをなくす方法などについて語っていただきました。
くまだまさしさんツイッター(2019年11月7日)より https://twitter.com/kumadamasashi/status/1192274797922783233?s=20
■殴る蹴るは当たり前。ささいなことから始まった先輩からのいじめ
―昨年、くまださんがいじめられていた体験をツイートして話題になりましたね。
軽い感じでツイートしたつもりが、ネットニュースで話題になったり、反響がすごくてびっくりしました。
―明るいくまださんからは想像もつきませんでした。
30年以上前の話なので忘れていることもありますけど、覚えている範囲で全部お話したいと思います。中学生になってすぐの4月くらいからいじめが始まりました。
―いじめのきっかけは何だったのですか?
家が裕福ではなく、お風呂がなかったので、毎晩、お風呂屋さんに行っていました。その帰り道に学校の先輩に会ったんです。その時は楽しい感じだったんですけど、日が経つにつれて、いじめに変わっていきました。
―どんないじめだったんですか?
殴る蹴るは当たり前。あとはお金を持ってこいとか、スーパーの商品を取ってこいとか。親の財布から1000円、1万円、多い時には5万10万とってきたこともありました。母親にもおかしいと思われていたはずですが、何も言えない状況でしたね。 ―10万円!?
当時流行っていたおニャン子クラブのコンサートチケットの代金です。先輩が「予定が入って行けなくなったから、10万円で買え」と。
―やり方がすごい。
そういうのも辛いですけど、殴られたり蹴られたりする方が辛い。小学校から上がったばかりで体もできてないですし。
―助けてくれる人はいなかったんですか? 助けはなかったですけど、1年生で他にもいじめられている子がいて、悔しさや辛さは分かち合ってましたね。そもそも急に家に電話がかかってきて、ビルの屋上とか、誰もいないところに呼び出されるので、自分から誰かに相談しない限り、周りには気づかれていませんでした。 ―呼び出されても行かないという選択はなかったんですか?
怖いからできない。親に「どこに行くの?」って聞かれても「お風呂屋さん」って言ったり。 わざと元気に振舞ってました。思春期だったので、そういうのを親にバレたくないという気持ちがあったのかもしれないですね。
―心配かけたくない、ということですか?
心配ではなく、恥ずかしいから。外ではいじめられていましたが、年頃で家では親の言うことを聞かなかったので相談できなかったです。唯一救いだったのは「1年生はすごくいじめられる。2年生はちょっといじめられる。3年生は天下」だったから、1年我慢すればいいと思えたこと。
―反抗期で相談しにくい時期だったんですね。
■我慢できず大爆発!全てを告白して状況が一変
でも我慢できなくなって、ついに大爆発しました。
―どうされたんですか?
今では本当に申し訳ないと思っているんですけど、ある日突然感情が溢れてきて、家で母を殴ったり蹴ったりしていました。そんな風に怒りをぶつけていた時に、初めて「俺も辛いんだよ」と全て告白したんです。
―お母様の反応はどうでしたか?
母親は人前で涙を見せる人ではなかったので、悲しかったり辛かったりしたと思うんですが、ただ僕の話をゆっくり聞いてくれました。そしたら、次の日からすごい動きがありました。
―動きとはどういうことですか?
両親が同級生の親に連絡したり、学校に電話したり。そこから、周りの親や先生たちが「これは緊急事態だ。よくぞ言ってくれた」という感じで動き出してくれました。
―その時、何がうれしかったですか?
「1年間は我慢しなければいけない」と思っていたのがなくなったことや、大人が止めてくれたということ、全てがうれしかった。プラス、前日まであったいじめがその日を境になくなったんです。
―良かったですね。でも「何チクってんだよ」とか言われなかったんですか?
そうなるんじゃないかと僕も焦ってましたが、まったくなかった。先生たちがいじめている人に電話したり家に行ったりして、「全員でくまだに謝りに行け」ということになりました。それで校長室に僕と先輩たちが集まりました。
■全員で自宅に謝罪しにきてくれた。でも黒幕は別....
―それはそれで怖いですね...
復讐されるんじゃないかと怖かったです。でも先輩たちはその場で謝った。僕も「自分にも原因があるかもしれないので気をつけます。これで終わりにしましょう」みたいな感じで言いました。 さらにその後、先生から連絡があって「先輩たちが『先生がいるから謝ったと思われたくない。くまだにしっかり謝りたいから家に行きたい』と言っている」と。それで10人くらいの先輩が家に来て、親も先生もいない状態で「本当にごめんな。実は俺らも本当はこんなことしたくなかった」と言ったんです。その先輩たちは2年生だったんですが、3年生に言われて仕方なくやっていていたんです。直接僕を殴ったり蹴ったりしていた2年生に言われたことが、すごく救いになりました。
―学校に行きにくくなりませんでしたか?
ちょうど夏休みに入る直前の出来事だったので、学校に行く必要がなかったんです。いいタイミングでした。
■お父様や先生、周りの大人たちに恵まれていた
―お父様は「いじめたヤツ、許せん!」みたいにならなかったんですか? 友達のご両親でそういうことを言う人はいたんですけど、僕の父は「どんなことでも経験だ。プラスにするもマイナスにするも、まさし次第だ」という考えでした。
―先生がしてくれたことでうれしかったことは何ですか?
今の時代だとダメなことかもしれませんが、いじめていた人たちに鉄拳制裁をくらわせていました。レスリング部の顧問で強くて怖い先生です。(笑)
―楽しそうに言わないでください(笑)
あとは夏休みの間、毎日のように担任の先生が家に来てくれました。「元気になりました?」とか「先輩から電話きてませんか?」とか、すごい心配してくれたり、話を聞いてくれたりしました。
―周りの大人に恵まれていたんですね。
そう思います。ちょうどその頃は特にいじめが流行っていたので、学校側もなくさなければいけないと思っていた。だから僕が言ったことで、みんなが止めさせるチャンスと思って、すぐに動いてくれた。
―先生にあこがれてレスリングに?
あこがれたという感じではありませんが、先生に「お前も強くなれ」と促されたのはありました。
■どうしていじめは起きる?どうすればなくせる?
―どうしてツイートをしようと思ったんですか?
僕の知り合いの知り合いのお母様が「子どもがいじめられて悩んでいる」とツイートをしているのを見て反応したんです。その人を助けようとかアドバイスしようとしたのではなく、思ったことをパッと言っただけ。 僕の娘は小学6年生なのですが、去年の夏ごろに学校でいじめとまではいかない小さな事件があったんですよ。それでも親である僕は心配したし、悩みました。だからさっきのお母様もたぶん悩んでいるだろうなと思ったんです。 ―いじめの経験が今にどう影響していますか?
どんなに嫌なことをされても絶対恨まずに前向きでいる、という父親の考えが根付いているので、全部プラスに考えられるようになっています。昨年あった闇営業問題で、本当に色んな人に迷惑をかけたのは反省していますが、あれを自分としてはマイナスにしてはいけないと考えました。全部プラスにしようという思いがあったので、落ち込みはしなかった。
―いじめをなくす方法はあると思いますか? 「これをやったら、すさまじいほど罰せられますよ」、例えば退学させられるとなったらたぶん減ると思うんです。“刑”を重くするっていうことは、なな先生の力でできるんですか?※刑法犯に該当するいじめの場合の話 ―私は政治家じゃないです(笑) 確かに、刑を重くすればいいという議論になりがちなんですが、ちょうどいいバランスにしなきゃいけない。新たな恨みが生まれて、戦争に繋がるようなこともありますから、難しいですよね。極端な例ですが、「いじめたから死刑」、となると重すぎる。
確かに重いですけれども、死刑になるくらいなら止めよう、と考えそうじゃないですか?これもよくある議論ですけど、被害者からすると「加害者を優先していませんか?」と思うこともある。
―でも、その人が更生する可能性もあります。それよりも、検証する必要があると思います。2年生の人がすぐに死刑になっていたら、3年生が親玉だったということは分かりませんでしたよね。
確かに死刑ってなったら、本当のことは言わないかもしれないですよね。
いじめをなくす工夫はあるとも思いますけれど、死刑まではいかなくても、もうちょっと罪を重くしてもいいのかなとも思います。
■いじりといじめの違い
―いじりといじめの違いは何ですか?
そこに楽しさがあるかないか。すごく簡単な言葉ですけど、結構大事だと思うんですよね。やられている側が、ただただ辛い、苦しいというならいじめかもしれません。でもそこに楽しさがあるなら、いじりなのかなと思います。
―いじっている側がいじりだと思っていても―。
いじられている側が楽しくなければいじめだよ、と。そういうことでございます。
■いじめに悩んでいる当事者、親へのメッセージ
―今、悩んでいる親や当事者にメッセージをください。
いじめをゼロにするのは難しいかもしれません。でも、ちっちゃくできる可能性はあります。そういうのは、自分1人だけでなく、周りの人の力が絶対に必要になってきます。
――くまださん、カツラをかぶっておもちゃの刀をふりかざす――
みんな周りと助け合わなかったらこれで成敗してやる!ダー、ダッダッダッダ、ダー!すみません。
月並みな言い方ですけど、やっぱり助け合いですよね。そして、悩んでいる人やいじめられている人は、友達とか誰でもいいから言った方がいいです。絶対に助けてくれる人、いますよね。うちの子がいじめられている、もしくはいじめている、という親御さんも、色んな人に相談して聞いてみる。そしたら絶対に何かしらの助けがあるはずです。
■最後に
明るいくまださんからは想像もできない過去に驚くばかりでしたが、声を上げさえすれば助けてくれる人もいるんだ、と希望も見出すこともできました。いじめがなぜ起こるのか、どうすればなくせるのか、というのは難しい議論です。でも今回のくまださんの対談が、1人でも多くの人が考えるきっかけになればいいなと思います。 ―vol.2では芸人・くまだまさしができるまでについてお聞きします。
明るいくまださんからは想像もできない過去に驚くばかりでした。声を上げさえすれば助けてくれる人がいるんだ、と希望も見出すこともできました。いじめがなぜ起こるのか、どうすればなくせるのか、というのは難しい議論です。でも今回のくまださんの告白が、いじめに苦しむ人にとって、声をあげるきっかけになればいいと思います。今苦しんでいる方、なんとか、声をあげるために、勇気を振り絞ってください。親や先生、場合によっては、いじめ問題に関心がある専門家の人が助けてくれます。
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