「テレビは減らそう」と決めたヒロシさんの芸人としてのスタンス ヒロシさん対談【vol.3】
- 笑下村塾
- 2019年12月4日
- 読了時間: 9分
更新日:2019年12月9日
「ヒロシです」という自虐ネタで人気を博したヒロシさん。実はそのあと、「テレビは減らそう」と決めたといいます。また、芸人の大事な商品である「ネタ」をヒロシです1本に決め、それを極み続けた訳とは一体なんであったのか。vol.3では、ヒロシさんの波乱な芸人人生を中心に、今の考え方、そしてたかまつへのアドバイスをお伺いしました。
ヒロシさん×たかまつななYouTube対談vol.3の動画はこちら↓↓↓ https://www.youtube.com/watch?v=Ev_Ci-iaarc&list=PLGIs2lskpIl3S06z4xhYMUY2ZGzdinsZj&index=3
■「テレビに出る=幸せ」でもなかった

―芸人としてのスタンスについてお伺いしたいと思います。「テレビは減らそうかな」って出なくなったというのは、自分からですか?
事務所にそう言ったのは事実だけど、言わなくてもそのうち出なくなったと思うよ。
―月に何千万と稼いでらっしゃったのに、なぜ出たくないと思ったんですか?
忙しいのが嫌だから。何千万をもらう2年前まではバイトだったのに、すごい額が入ってきたよ。それまでは金が入ったら幸せだと思ってたけど、実際そうなるとあんまり幸福感を得られなかったんだよね。
―どこに行ってもキャーって言われるじゃないですか。モテるけど遊ぶ暇がない。地方とかでネタやる仕事に行って舞台で「ヒロシです」ってやると、当時は人気があったから若い女の子がキャーキャー言ってる。俺もネタやりながら女の子の顔を見たりする(笑)でも公演が終わったら女の子との接点もないまま、タクシーに乗って帰って終わり。この繰り返しだから。あまりモテた実感はなかったし、幸せな感じはなかったな。
―「もうテレビは出ない」と言って後悔しませんでしたか?
出なくなった期間に色々考えたよ。テレビに出なくなったら「一発屋」って言われて、扱いも露骨に変わった。売れてたら弁当とか食えないくらいのケータリングがあるのに、テレビに出なくなった俺が髭男爵と3人で営業に行ったら、楽屋にあったのがペットボトル1本だった、とかさ。
そういう嫌なことを体験していったら、「別につまんないと思われてもいいから、テレビにしがみついておけばよかったな」と思ったときもあったよ。独立した時に、それをどうにかしてひっくり返したかったから、とりあえずテレビに出た時期もあったけど、やっぱりストレスだったね。
■「ヒロシです職人」になった理由

―ピン芸人でも、コント、漫談、一発ギャグ、歌ネタ、フリップなどいろんなジャンルのネタがあると思いますが、ヒロシさんは、あえて新しい形のネタを作らず、「『ヒロシです』職人」になった理由は何ですか。
「ヒロシって『ヒロシです』しかやらねえな」って言われてたけど、あそこまで行ったら「ヒロシです」をやる以外に選択肢はない。最初の頃は別のこともやろうか考えたけど、無理だなと思って受け入れたのね。
―漫才師の人は型が同じでも、あまり言われないのに、ピン芸人って、絶対にそういうこと言われますよね。
当時、ブログのコメントに「同じネタばっかりやりやがって」みたいなのを書かれた時に、頭にきて返信したことがあるのよ。「俺はヒロシです職人だ」と書いたら「は?」って書かれて、急に恥ずかしくなって消したけど。「ヒロシです」のネタ作りに関して誰にも負けないつもりだったのに、それじゃ許されないんだよね。そう思ったらやる気がなくなったのかな。
―2発目を当てようとして新しいネタを作らなかったのはなぜですか?
YouTubeがヒットしてからあまり作らなくなった。だって、それまで呼び捨てにされることが多かったのに、キャンプやるようになってからヒロシ先生って呼ばれるようになったんだよ。どっちが気持ちいいよ?
―ヒロシ先生(笑)
でしょ? じゃあ、ネタ作るよりもキャンプ行った方が良くね? っていうのが強くなった。
―先輩方と営業でネタをしに行ったら、一発屋と呼ばれる方は当時流行ったネタをやるしかない。そこでヒロシさんだけウケるのがすごい。私の印象では、パッケージの中で新ネタを作らず昔のまま、という人がほとんどなんですけど、ヒロシさんはネタをずっとアップデートしているからずっとウケる。
それでも結局、テレビに出たら一発屋って言われるから、アホくさくてやらなくなった。今は同じネタしかやってないね。
■作り込んだキャラは後々キツイ…

―今はブランディングをどのように考えていますか?
「ヒロシです」をやっていた時は、冴えないモテないキャラとか、誕生日は2月14日のバレンタインとか色々考えてた。モテないのにバレンタイン生まれってなかなかかわいそうだから。
―そこまで考えてらっしゃる方は、なかなか聞かないですね。
俺はキャラクターを売る芸だから、バックボーンを考えていたよ。名前も本名は齊藤健一だけど、覚えやすいからヒロシにした。ヒロシはネタ以外であまりしゃべれない、でもボソっとつぶやく一言で笑わせる、という設定にもした。何考えているか分かんなくて気持ち悪いけど面白い、っていうのが理想だったわけ。でも面白い部分がなかったから、ただ気持ち悪い存在になっちゃった。
―キツイですね。私もお嬢様芸人だから、お嬢様っぽくないことは言わない方がいいと思うと、あまり入っていけなくなります。
キャラクターを作り込みすぎると、逆に崩せなくなるから難しいよね。
ネタもそう。「ヒロシです」ってネタを自分で作っておきながら、これしかできなくなってるじゃん。自分で自分の首を絞めたんだよね。
―私もテレビに出る時は、全く関係のない番組でも冒頭にネタをやらされました。そのキャラクターのままボケてコメントもしなきゃいけない。
俺もずっとそれをやらされてたのよ。今のキャンプの話でもそれがあるから、ちょっとやりづらい。自分の中で話の流れがあるから、普通に最初からキャンプの話をしたいんだけど、挨拶がてらに「『ヒロシです』をやって」って言われる。漫才師なら、最初の頃に「漫才やって」って言われても、そのうち言われなくなるじゃん。なのに俺はいまだに言われるのが、納得いかないんだよね。
■今だからできた 番組で激怒!

―ある密着番組で怒ってらっしゃいましたよね。あれかっこよかったです。
※今年5月にヒロシさんが出演した番組についてtwitterで発言し話題になった。「俺は一発屋だと言われるのが嫌で、頑張って今のクソ忙しい状況を作った。先日、俺の今の成功を純粋に密着したいと某番組からオファーを受けた。一発屋の内容ではないと。予告を観たらあの一発屋が大儲けという見出し。ガッカリだわ。全てではないが、テレビは安易で嘘が多すぎる。レベルが低すぎるわ。」と苦言を呈した。
俺は一発屋って言われるのが嫌、っていうのを承知で番組側はオファーしてきたのに、オンエアを見たらそういう企画になったわけ。それは頭にくるよね。
―それを言えるのが、かっこいいですね。
5年とか10年前なら絶対言わなかっただろうね。テレビも出ているけど、YouTubeもやってたりして選べるからね。
―正しい言い方かは分からないけど「テレビの人より完全に立場が上」という覚悟がないとできないなと思いました。「もうテレビに出なくていい」「ああいうことを言っても出られる。生きていける」と。
だから色々やって、自分が帰れる場所がいくつもあった方がいい。前までは1つしかなかったけど、今は違う生き方ができるから。
―メンタリストDaiGoさんとかすごいですよね。
今までのタレントは生きる場所がテレビしかなかったけど、今は多少、自由な発信ができるようになったんじゃないかな。
―世間の芸人に対するイメージってありますよね。私がニュース解説をすると「お笑い芸人さんなのに1つもボケないんですね」とか言われる。芸人のイメージみたいなものに、どうやって打ち勝ってるんですか?
俺は「テレビで見ませんね」って言われるくらいで「芸人らしくない」とかは意外と言われたことがない。たかまつさんとか村本さんは、お笑いとはかけ離れた政治みたいな話に触れるから、そう言われるんだろうね。俺がすごいなと思ってるキンコン西野さんだって、最初はバカにされてたじゃない。
今は年下の人の方が新しいことにすぐ食いつくじゃん。見てると楽しそうだから、ちょっと覗いてみようかなと思う。今の俺は若い人から刺激を受けることが多くなったね。
■たかまつななにアドバイスを!

―私にアドバイスをください。
逆にアドバイスいただきたいくらい。俺も色々やってきてるけど、ホリエモンにトークイベントのオファーなんてできないよ。
俺はこういう人たち(笑下村塾の撮影スタッフ)なんて使えないもん。撮影用のライトを買う財力はあっても、環境は作れない。人が集まってくれたとしても、その人たちとうまくいかないのよ。
―私もそうですよ。よくケンカしてます。
意見のぶつかり合いでさらにいいものができるってことでしょ。それがすごいと思う。
―デビュー前は、どんな芸人になりたかったんですか?
当時はコンビでやってたから、いつかコンビで売れて冠番組もって若手を仕切る、みたいなことを考えてました。でも今は、昔とは世がまったく変わっているので、これはこれでいいと思う。
―私はもっと売れたいという気持ちがあるので、今の自分でいいとは全然思えません。好きなことをやってるのに、充実感があまり得られません。
今の活動をやっていればいいんじゃないかな。俺がたかまつさんの年齢だったら、近い活動内容をやってると思う。この後もテレビは残るだろうけどYouTubeとかもあるから、楽しい方に出ればいい。
―「楽しい」が第一基準というのがすごいですね。
自分が納得できるから。例えば、これまでに大御所のゲストと一緒に歩くような旅番組はやっていて、これを1人でやりたいというのが夢だった。それが今叶って、BSで「迷宮グルメ」っていう海外ロケの番組をやってる。この番組、死ぬかと思うくらいキツイんだけど、面白いと思うものに触れて、面白い表現ができるから気持ちいんだよね。だからキツくても辞めない。でも出たくない番組もあるから、そこは選びながらね。
―私も早くそうなりたいです。お忙しい中、ありがとうございました。
なんだかんだ言って、暇だろうと思ってるでしょ(笑)たかまつさんは単独ライブで村本さんや堀潤さんを呼んでるよね。そういうちゃんとした時には俺を呼ばないよな! このチャンネルだって中田さんとかの後に、最後の出しガラみたいな状態で俺を出して。
―そんなことないです。本当にうれしいです。
ヒロシさんはずっと応援してくださっていて、悩んでいた時期に「飛び出せ」って言ってくれたのはヒロシさんとカズレーザーさんだけでした。
俺も当時、たかまつさんと話していて、考えは間違ってないんだとか、勇気づけられることがあったよ。お互い色々あったけど、今こうして食えてるからね。それはすごいことだよ。
―芸人だけしてたら、今でもバイトしなきゃいけなかったと思います。今、好きなことができて幸せですね。
だと思いますよ。
―本当にありがとうございました。
思ってねえくせに。
―やめてください(笑)